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本日9月30日は「世界翻訳の日」。
そこで、カンハヌル主演作のタイトル翻訳について色々考察してみました🎬
カンハヌルの出演作を韓国語の原題で並べてみると、日本語の題名だけを見ていたときには気づかなかった言葉が見えてきます。
たとえば、韓国語には 너・그대・당신 という異なる相手の呼び方があります。でも、日本語で「きみ」「あなた」と訳せば終わり、というわけではありません。逆に、原題にはない「私」が日本語の題名で加わることもあります。
今回は映画とドラマの題名を、置き換える・足す・消すの三つの視点から見てみます。
(出演作がとても多くて、本当は全部書きたいのですが、書ききれない…。)
置き換える――「きみ」「あなた」は同じ言葉?
まずは、【日本原作→韓国リメイク版】の二作品。
너는 펫(2011)→『きみはペット』
너 は、親しい相手などに使うくだけた二人称。日本語なら関係や話し方によって、「きみ」「おまえ」「あんた」にもなります。題名の 너 と「きみ」が、いつでも一対一で対応するわけではありません。
この映画は日本の漫画『きみはペット』の映画化。
なので、原作のタイトルがそのまま使われているんですね。
ところが、同じ「きみ」でも『花ざかりの君たちへ』はちょっと違います。
아름다운 그대에게(2012)→『花ざかりの君たちへ』
こちらも日本の同名漫画を原作とするドラマです。
日本語の「君たち」が、그대になっています。
그대 も相手を指しますが、日常的な 너 より、詩や歌に似合う言葉。「美しいあなたへ」といった響きがあります。
그대들になっていないのもおもしろいところです。
ここからは、韓国発の作品です。
비와 당신의 이야기(2021)→『雨とあなたの物語』

こちらの邦題は原題にかなり近く、당신 は「あなた」と訳されています。
ただし、韓国語の 당신 と日本語の「あなた」は、使える場面が完全に重なるわけではありません。
日本語の「あなた」は名前を知らない相手への呼びかけにも使われますが、韓国語の 당신 はそういう場面では通常使わず、夫婦間の呼びかけや口ゲンカで使うか、詩や歌詞などで使われます。
この題名では、당신 はちょっと詩的な雰囲気を持たせているので、日本語でも「あなた」が合うのだろうなと思います。
비와 당신의 이야기 には、手紙を通して相手を思うこの作品に合った、少し距離感のある響きを持たせている、といったところでしょうか。
당신의 맛(2025)→『隠し味にはロマンス』
ドラマ『당신의 맛』にも 당신 が出てきます。直訳すれば「あなたの味」。ところが邦題では「あなた」が消え、「隠し味」と「ロマンス」で料理と恋愛の物語だと伝えています。
同じ 당신 でも、『雨とあなたの物語』では「あなた」として残り、『隠し味にはロマンス』では別の表現に置き換わっているんですね。

ちなみに英語タイトルは「Tastefully Yours」で、直訳すると
「趣味よく、あなたのもの」 「センスよく、あなたへ」
という感じで、料理を扱うドラマのタイトルとして、taste の「味」と「好み・センス」の二重の意味を効かせていて、なかなか洒落ています。
足す――原題になかった説明が邦題に入る
몬스타(2013)→『モンスター ~私だけのラブスター~』

短い原題 몬스타 に対し、日本語には「私だけのラブスター」という副題が付きました。ここで注目したいのは「私だけの」。韓国語の原題には、나(私) も 내(私の) もありません。
音楽と恋愛、そして「私」にとって特別な誰か。日本語の題名は、原題にない視点を足して、作品の雰囲気を伝えています。
달이 뜨는 강(2021)→『王女ピョンガン 月が浮かぶ川』
달이 뜨는 강 は、言葉を追えば「月が昇る川」。邦題には、その前に「王女ピョンガン」が加わります。詩的な風景だけだった題名に、物語の中心人物が現れるわけです。
뜨다 には「浮かぶ」「昇る」などの意味があります。「月が浮かぶ川」という表現を残しながら、人物名を足して作品への入口を作っています。
消す――原題の言葉が日本語題名からなくなる
커튼콜: 나무는 서서 죽는다(2022)→『カーテンコール』

このドラマは、当初 나무는 서서 죽는다(木は立ったまま死ぬ)というタイトルで企画されていました。
このタイトルは、スペインの劇作家アレハンドロ・カソナの戯曲 Los árboles mueren de pie から来ていて、「木々は立ったまま死ぬ」という意味です。
倒れることなく最後まで立ち続ける木の姿から、最後まで誇りや尊厳を失わずに生きる姿を思わせる表現です。
その後、韓国での正式タイトルには 커튼콜: 나무는 서서 죽는다(カーテンコール:木は立ったまま死ぬ)と、커튼콜が加わりました。(ニュース記事はこちら)
ところが、日本のタイトルでは後半の 「木は立ったまま死ぬ」がなくなり、邦題はシンプルに『カーテンコール』となっています。
もとの題名に込められていた「最後まで立ち続ける」というイメージを知ってから『カーテンコール』を見ると、タイトルから受ける印象も少し変わってきますね。
해적: 도깨비 깃발(2022)→『パイレーツ:失われた王家の秘宝』

こちらは副題を単に削ったというより、丸ごと入れ替えた例です。
韓国語の 도깨비 깃발 は「トッケビの旗」。
도깨비 は、人間と相撲を取ったり、不思議な棍棒で富を生み出したりと、怖い怪物のイメージだけでは収まらない多彩な顔をもつ存在で、日本語の「鬼」や英語の goblin と一語で訳しにくい、韓国の民間伝承に登場する存在です。
「トッケビの旗」には原題ならではの文化的な響きがあるため、韓国文化に馴染みがないともしかしたら意味がつたわりにくいのかもしれません。一方、「失われた王家の秘宝」は、どんな冒険かということを伝わってくるタイトルになっています。
なぜその邦題にしたかという公式な説明ではありませんが、トッケビを一言で訳しにくく伝わりにくいことも理由の一つなのかなと思いました。
(あの有名なドラマ「トッケビ」を連想しちゃうから、というのはあるのかないのか…。)
Clementine’s Note🍊
「きみ」と訳された 너、邦題では消えた 당신、日本語で足された「私だけの」。一つずつ見れば韓国語の語彙の話ですが、原題と邦題を並べると、作品をどう紹介するかという話にもなります。
邦題から作品に入り、原題に戻ってみて、ときどき英題にも行ってみたりと、作品の翻訳も奥が深くて面白いなと思います。
ちなみに、次期作「국제시장2 」が公開を控えていますが、その最初の1期目のタイトルは、日本語では「国際市場で逢いましょう」、英語では「Ode to My Father」=「父に捧げる」なんですよね。
国際市場は韓国の人々にとっては、釜山の国際市場の雰囲気や空気感、世界観も一言で感じとることができるものであっても、海外の人にとっては、他の視点からの訳語のほうがわかりやすいのかもしれませんね。
色んな言語の訳語を知って作品を観ると、またちがった感想が出てきそうです🎬
出典
하지원, KBS 새 드라마 ‘커튼콜’ 합류…강하늘과 호흡 2022-04-25 14:10


